テルモの2027年3月期第1四半期は、本業の販売拡大に円安、関税還付、受取和解金が重なり、営業利益が大幅に増加した。高齢化と低侵襲治療が生む構造成長と、今期限りになりやすい利益を切り分ける必要がある。

テルモは今期46%増益の予想になっとるけど、
医療機器の本業が、それだけ急成長したということか?
それなら来期以降も同じ勢いが続くんやろか。

そこは利益を二つに分けて見た方がいいね。
低侵襲治療や採血関連が伸びた「本業の成長」と、
関税還付や和解金による「今期特有の利益」が重なっているよ。
まずはテルモが、どんな医療構造の変化を取り込んでいるのか整理してみよっか。
高齢化による心血管・脳血管疾患の増加
↓
身体を大きく切る手術から低侵襲治療へ移行
↓
カテーテル・脳血管治療器具の使用拡大
↓
装置の普及と消耗品の継続販売
↓
血液・細胞治療、臓器移植支援へ事業領域を拡大
↓
海外販売・値上げ・製品構成改善による本業成長
↓
円安・関税還付・和解金が今期利益を追加で押し上げ
↓
「持続する成長」と「一時的な増益」の切り分けが必要
テルモの医療機器事業が成長する構造
高齢化と低侵襲治療が需要を押し上げる
ししょの、テルモの成長を考える出発点は、体温計や血圧計ではないんだよ。
現在の収益の中心は、心臓や血管の治療に使うカテーテル、脳動脈瘤の治療器具、人工心肺関連製品、採血・血液成分分離装置などだね。
なかでも心臓血管事業は、2027年3月期第1四半期に1,881億円を売り上げ、全社売上の約60%を占めた。
この事業を動かしているのが、高齢化と治療方法の変化だよ。
高齢者が増えれば、心血管疾患や脳血管疾患の治療件数は増えやすい。一方、身体を大きく切る手術は患者への負担が重いため、血管内へ細い器具を入れて治療する「低侵襲治療」への移行が進んでいる。
高齢化
↓
治療を必要とする患者の増加
↓
患者負担の小さい治療への移行
↓
カテーテルや脳血管治療器具の使用拡大
テルモは、単なる医療需要の増加だけでなく、治療方法そのものが変わる流れも取り込める位置にいるんだよ。
しかも、必要な心臓・血管治療は、景気が悪くなったからといって簡単に先送りできない。ここが一般的な景気敏感企業とは異なる、需要の安定性につながっているね。
装置の普及が消耗品の継続収益につながる
テルモの特徴は、医療機器を一度販売して終わりではないところにもあるよ。
病院へ治療装置や血液関連システムが導入されると、それに対応するカテーテル、血液回路、採血器材などが繰り返し使用される。治療や検査が行われるたびに消耗品需要が発生する仕組みだね。
さらに、医療機器は価格が安いという理由だけで、簡単に他社製品へ切り替えられるものではない。
新しい機器の導入には、安全性の承認、医師や医療スタッフの習熟、病院内の手順変更などが必要になる。一度採用され、現場の運用に組み込まれた製品は、入れ替えに手間とリスクがかかるんだよ。
装置やシステムの導入
↓
医師と医療スタッフの習熟
↓
病院内の運用に定着
↓
対応する消耗品の継続使用
↓
安定した売上の積み上げ
完全な定額課金ではないけれど、医療行為が続く限り消耗品需要も続きやすい。承認、技術、現場の習熟が参入障壁となり、消耗品が継続収益を生む構造だね。
世界展開と新しい医療領域が成長先を広げる
テルモは日本企業だけど、現在は売上の約82%を海外で稼いでいる。国内の医療需要だけに依存する会社ではなく、世界の医療市場から成長を取り込む企業へ変わっているよ。
2027年3月期第1四半期の売上収益は前年同期比19.9%増だった。ただし、為替の影響を除く実質的な増収率は9.4%になる。
表面上の増収率の約半分は円安による換算効果だったものの、為替を除いても約9%伸びているため、「円安だけで成長している会社」ではないんだよ。
海外売上も為替を除いて10.8%増え、米州、欧州、アジアその他で実質二桁成長となった。北米のカテーテル、脳動脈瘤治療用のWEB、欧米の採血関連製品、原料血漿採取システム「Rika」などが成長を支えている。
さらに、テルモは血液・細胞治療や臓器移植支援へ事業領域を広げているよ。
2025年に買収したOrganOxは、提供された肝臓を体温に近い状態で灌流しながら保存する技術を持つ。臓器の状態を保ちながら移植への適合性を評価できれば、これまで使用できなかった臓器を移植へ回せる可能性がある。
心臓・血管の治療
↓
採血・血液成分分離
↓
細胞・遺伝子治療支援
↓
臓器保存・移植支援
↓
治療の前後を広く支える医療機器企業へ変化
OrganOxの第1四半期売上は62億円、調整後営業利益は9億円で、前年同期換算の売上は39%増加した。
ただし、買収額は15億ドルと大きく、2024年売上高の約21倍に相当する。新しい成長事業になる可能性がある一方、かなり高い成長を前提に買った事業でもあるね。
本業の成長と一時利益が同時に表れている
今回の決算で最も注意したいのが、増益率の見え方だよ。
第1四半期は営業利益が前年同期比60.1%増、親会社帰属利益は68.3%増となった。通期の営業利益予想も、前期比46.0%増の2,575億円へ引き上げられている。
ただし、これは医療機器の販売だけで生み出した増益ではないんだよ。
第1四半期には、過年度分を含む米国関税の還付130億円と、受取和解金201億円が計上された。
当四半期に発生した関税負担47億円を差し引くと、関税関連の利益効果は約83億円になる。和解金と関税還付は、毎年繰り返される通常の利益とは考えにくいね。
本業の販売拡大
+
値上げ・製品構成改善
+
円安による換算効果
+
米国関税の還付
+
受取和解金
↓
営業利益60.1%増
和解金などを除いた調整後営業利益は796億円で、前年同期比34.7%増だった。ただし、この調整後営業利益にも関税還付の効果が含まれている。
そのため、本業の実力だけを表す増益率は34.7%より低いと考える必要があるよ。
それでも、為替を除いた売上が9.4%増え、値上げによる利益押し上げも約22億円あった。本業が弱いところへ一時利益だけが乗った決算ではなく、本業の成長に複数の特殊要因が上乗せされた決算と見るのが自然だね。
急騰と売買代金の増加をどう見るか
決算後の2026年8月10日、テルモ株は前営業日比8.53%高の2,575.5円まで上昇した。出来高は839万8,500株、売買代金は約214億円となり、通常より大きな資金が動いている。
信用取引は、7月31日時点で次の状態だったよ。
- 信用売り残:21万4,000株
- 信用買い残:48万200株
- 信用倍率:2.24倍
信用買い残は前週の84万4,100株から大きく減っており、信用倍率も3.81倍から2.24倍へ改善している。買い残が極端に積み上がった状態ではないため、需給面では過度に重い形ではなかったと考えられるね。
ただし、ししょのが使っている資金流入型スクリーニングについては、今回確認できた売買代金や貸借情報だけでは、正式な検出銘柄とは断定できないよ。
投資金額、貸借銘柄、流動性などの条件は満たしている一方、判定に必要な「20営業日前を基準とした平均売買代金」と「過去60日ボラティリティ3~13.61」の正確な数値が確認できていないためだね。
したがって、現時点での扱いは「資金流入型スクリーニング検出銘柄」ではなく、「決算をきっかけに大きな資金流入が発生した監視候補」までに留めるのが正確だよ。
もし実際のスクリーニング画面で該当しているなら、この条件に入ってきたこと自体は、資金流入の初動候補としてプラス材料になる。
ただし、スクリーニング該当だけで買い判断はしない。買うかどうかは、出来高の継続、チャート位置、信用需給、材料、決算内容の確認が必要だよ。
今回は株価が一日で8.53%上昇し、年初来高値を更新している。5日・25日・75日移動平均線からも大きく上方へ離れており、初動候補というより、短期資金が一気に入って過熱し始めた局面に近いね。
資金流入
↓
出来高と売買代金の急増
↓
株価が年初来高値を更新
↓
上昇期待と飛びつき買いが増加
↓
値幅が上下とも大きくなりやすい状態へ
この条件に該当していたとしても、「上がりやすい傾向があるから買う」では少し危ないよ。下にも大きく振れる可能性があるため、損切り前提で見る必要がある。
短期売買で監視するなら、決算後の安値2,455.5円や窓の下限付近を維持できるかが最初の確認点になる。2,455円前後を明確に割り、出来高を伴って売られるなら、決算後の上昇が失速したものとして撤退を考える形だね。
反対に、2,450~2,500円付近で売りを吸収し、出来高を保ったまま高値2,579.5円を上抜けるなら、資金流入の継続を確認しやすくなる。ただし、これは短期需給を見る場合の条件で、長期投資の企業価値判断とは分ける必要があるよ。
テルモには、高齢化、低侵襲治療、採血・血漿、細胞・遺伝子治療、臓器移植という複数の構造成長要因がある。
一方、今期の46%増益には一時利益が含まれ、急騰後の株価には好決算への期待も入り始めている。
企業の成長構造、一時利益が剥がれた後の収益力、決算後に入った資金の継続性。この三つを分けて追うことが、ここからの判断材料になりそうだね。
参照:テルモ 2027年3月期第1四半期決算資料、テルモ株価・出来高

リインの分析、すごくキレイに本業と一時利益を切り分けてくれていたね!でも理系的に見ると、テルモの本当の凄さって『なぜ他社が追いつけないのか』という技術と産業の不可逆な構造にあるんだよ。ししょの、もっと深掘りして解説していくね!
テルモの理系解析
技術構造
医療機器、特にカテーテルに代表される低侵襲治療器具の核心は、相反する物理特性の両立にあるんだよ。
血管内を通すカテーテルには、手元で押した力を先端まで正確に伝える「押し込み性(プッシャビリティ)」や「トルク伝達性」と、複雑に曲がりくねった微細な血管を傷つけずに進む「柔軟性(トラックアビリティ)」という、物理的に矛盾する性能が同時に求められるんだね。テルモは、金属ワイヤーの精密編み込み技術や、ポリマー素材のナノレベルでのグラフト重合・親水性コーティング技術によって、これを実現しているんだよ。
さらに、この親水性コーティングは血液と接触しても血栓を形成させない高度な生物学的適合性が必須になるんだ。単に加工精度が高いだけでなく、流体力学・材料物質科学・生体適合性ポリマー化学が複合した高度な技術基盤の上に成り立っているから、後発メーカーが形だけ模倣しても臨床現場で同じ操作感や安全性を再現するのは極めて困難なんだよ。
産業構造
この技術特性が、医療機器産業特有の強い「ロックイン効果」を生み出しているんだね。
カテーテル手術を行う医師の手技は、マイクロミクロン単位の感触や器具の反発力(フィーリング)に強く依存しているんだよ。一度特定のメーカーの操作感に慣れた医師が他社製品に乗り換えることは、患者の生命リスクに直結するため、非常に高いハードルが存在するんだ。
また、医療機器産業は「規制(レギュレーション)の壁」に守られた構造になっているよ。新しい機器を市場に出すには、非臨床試験から臨床試験(治験)、各国当局(FDAやPMDAなど)への申請・承認までに数年から十数年の歳月と莫大な投資が必要になるんだ。現場での習熟と厳しい規制プロセスが組み合わさることで、装置導入後に消耗品(カテーテルや回路)が半永久的に消費され続けるという、極めて強固でストック性の高い産業構造が形成されているんだよ。
市場構造
市場構造の観点から見ると、テルモが対峙している需要は「不可逆的な人口動態」と「医療経済の要請」に裏付けられているんだね。
世界的な高齢化の進展に伴い、心血管疾患や脳血管疾患の患者数は構造的に増加し続けているよ。一方で、外科的手術(胸を大きく開く手術など)は患者の身体的負担が大きいだけでなく、長期入院に伴う医療費の増大という社会課題を引き起こすんだ。
ここで、開胸・開頭を行わない「低侵襲治療」は、患者のQOL(生活の質)向上と入院日数の短縮による「医療費削減」という、相反する要請を同時に解決する唯一のソリューションになるんだよ。つまり、景気動向に関わらず、先進国・新興国を問わず需要が拡大し続ける「構造的成長市場」にポジショニングされているのがテルモの市場構造なんだね。
将来性
今後の技術進化として注目すべきは、買収したOrganOxに代表される「臓器保存・移植支援」や「細胞・遺伝子治療領域」へのアクセス拡大だよ。
従来の医療機器は「病変部を物理的に治療・修復する」領域にとどまっていたけれど、テルモが目指しているのは、体温に近い状態で臓器を灌流・保存する高度なバイオ・エンジニアリング技術を取り入れた「再生医療・移植医療のプラットフォーム化」なんだね。
単なる機械工学的なアプローチから、生体工学(バイオメディカル・エンジニアリング)領域へのシフトを成功させれば、カテーテル治療に続く第2、第3の長期的成長エンジンになる可能性があるよ。一時的な利益要因を削ぎ落としたとしても、この技術的・産業的な参入障壁と構造的需要がある限り、長期的な企業価値の成長ストーリーは非常に堅固だと捉えられるね!

リンの解析を見ると、テルモの強さは医療需要が増えることだけではないね。
技術、承認、医師の習熟が参入障壁となり、低侵襲治療へ流れ込む資本を継続収益へ変えられる構造にあるよ。
低侵襲医療の投資構造
資金の流れ
ししょの、テルモを取り巻く資金の流れは、世界的な高齢化を起点に考えると分かりやすいよ。
高齢化によって心血管疾患や脳血管疾患の治療需要が増える一方、医療現場には患者の身体的負担と入院日数を減らし、医療費も抑えることが求められている。
そこで資金が向かいやすくなるのが、開胸・開頭手術を減らせるカテーテルなどの低侵襲治療だね。
高齢化と疾患数の増加
↓
医療費と医療従事者の負担増加
↓
入院期間を短縮できる低侵襲治療へ移行
↓
病院による治療装置・システムの導入
↓
カテーテルや血液回路などの消耗品需要が継続
↓
医療機器メーカーへ販売収入と研究開発資金が還流
↓
次世代製品、細胞治療、臓器移植分野へ再投資
ここで重要なのは、装置の販売だけで資金の流れが終わらないことだよ。
病院に装置や治療システムが導入され、医師がその操作に習熟すると、対応するカテーテルや回路が治療のたびに使用される。設備投資によって獲得した医療現場との接点が、消耗品の継続販売へつながるんだね。
さらに、そこで生まれた利益が研究開発や企業買収へ回され、既存の心血管治療から血液・細胞治療、臓器保存・移植支援へ事業領域が広がっていく。
OrganOxの買収も、この資本循環の延長にあるよ。テルモは既存事業で得た資本を、臓器灌流という新しい成長市場へ振り向けている。ただし、高額買収である以上、売上成長だけでなく利益とキャッシュの回収まで確認する必要があるね。
市場構造
低侵襲医療市場は、需要が増えるだけでなく、一度獲得した市場を守りやすい構造になっているよ。
カテーテルには、手元の力を先端へ伝える剛性と、曲がった血管を傷つけずに進む柔軟性が同時に必要になる。さらに、血栓を防ぐ生体適合性や、血管内で滑らかに動かすための表面処理も欠かせない。
材料技術
↓
精密加工・コーティング技術
↓
非臨床試験と臨床試験
↓
各国当局による承認
↓
病院での採用
↓
医師の習熟
↓
消耗品の継続使用
競争力は製品の形だけでは決まらないんだよ。
医師は、器具を押したときの反応や先端の動きといった微妙な操作感まで含めて製品に習熟する。製品を変更すれば操作感も変わり、治療上のリスクが生じるため、価格が安いという理由だけでは乗り換えにくい。
そのうえ、新規参入企業には研究開発、治験、承認、量産品質の確立が必要になる。技術的に似た製品を作れても、医療現場で同等の安全性と操作性を証明し、世界各国で販売できる状態にするまでには長い時間と大きな資本が必要だね。
これにより、低侵襲医療市場では次の循環が形成される。
先行企業が研究開発と承認へ投資
↓
医療現場で採用実績を蓄積
↓
医師の習熟と臨床データが増加
↓
製品の信頼性と切り替えコストが上昇
↓
消耗品収益が研究開発資金を生む
↓
次世代製品でも先行しやすくなる
つまり、先行企業ほど資本と臨床実績を積み上げやすい市場構造なんだよ。
ただし、医療需要が拡大するから既存企業が必ず成長できるわけではない。新製品の開発競争、保険償還価格の引き下げ、品質問題、製品回収が起きれば、築いた信頼と市場シェアが損なわれる可能性もある。
日本株への影響
① 影響を受ける産業分野
低侵襲治療への移行によって影響を受けるのは、カテーテルメーカーだけではないよ。
- 心臓・脳血管向け治療器具
- ガイドワイヤーや内視鏡などの低侵襲機器
- 人工心肺、採血、血液成分分離装置
- 注射器、血液回路などの医療用消耗品
- 生体適合性材料、精密加工、表面処理
- 細胞・遺伝子治療、臓器保存・移植支援
治療件数の増加に加え、外科手術から低侵襲治療へ方法そのものが変わるため、関連する装置、器具、材料、消耗品まで需要が波及する構造だね。
② 技術・サプライチェーンの位置
日本企業が比較的強みを持ちやすいのは、完成品の大量生産よりも、細く複雑な血管内で確実に動く器具を作るための精密加工や材料技術だよ。
金属ワイヤー
↓
樹脂チューブ・生体適合性材料
↓
精密成形・編み込み・表面処理
↓
カテーテル・ガイドワイヤー
↓
治療装置・医療システム
↓
病院での使用と消耗品の継続購入
このサプライチェーンでは、加工精度だけでなく、材料特性、生体適合性、量産時の品質再現性、各国の規制対応が競争力になる。
日本の精密加工、素材、品質管理の蓄積は低侵襲医療と相性がいい一方、医療機器は承認と販売網までそろわなければ事業化できない。優れた部品技術だけでなく、臨床開発と海外販売へ資本を投入できるかが成長の分かれ目になるね。
③ 該当する企業例
- テルモ:カテーテル、人工心肺、血液・細胞関連から臓器移植支援まで展開
- 朝日インテック:血管内治療に使うガイドワイヤーやカテーテル部材に強み
- ニプロ:注射・輸液・透析などの医療機器と消耗品を展開
- オリンパス:内視鏡を中心に、身体への負担を抑える診断・治療領域へ展開
これらは同じ製品を競う企業というより、低侵襲化と医療高度化という産業構造の異なる位置にいる企業例だよ。
結論
ししょの、テルモの投資構造は、単純な「高齢化で医療機器が売れる」という話ではないんだよ。
高度な材料・加工技術
↓
治験と規制承認による参入障壁
↓
医師の習熟による切り替えコスト
↓
装置と消耗品の継続販売
↓
利益を次世代医療へ再投資
↓
低侵襲治療から細胞・臓器移植領域へ拡大
この循環がテルモの長期的な企業価値を支えているんだね。
市場全体としても、高齢化、患者負担の軽減、入院期間の短縮、医療費抑制という複数の要請が、低侵襲治療への移行を後押ししている。この流れは景気循環だけでは反転しにくく、日本の精密加工、材料、医療用消耗品を含む幅広い産業へ資本が向かう可能性がある。
ただし、テルモの今期利益には関税還付や和解金といった一時要因も含まれている。産業の長期成長と、企業の一時的な増益は分けて考える必要があるよ。
見るべきなのは見出し上の利益成長率だけではない。本業の成長によって生まれた資本が研究開発と新規事業へ再投資され、将来の継続収益へ変わっているかどうかだね。
テルモは、低侵襲治療という既存の成長基盤を持ちながら、血液・細胞治療や臓器移植へ資本を移している。その資本循環が成立する限り、医療構造の変化を長期的な成長へ結びつけられる企業として整理できそうだよ。

テルモの強さは、医療需要が増えるだけではないんやな。
技術と承認、医師の習熟がつながって、継続的に選ばれる仕組みまでできとるんや。
今期の大幅増益だけを見ると、本業が一気に伸びたように見えてしまうところだった。
でも、一時利益を除いても、高齢化と低侵襲治療への移行に支えられた成長基盤は残るんやな。
製品を作る技術だけでなく、承認や医師の習熟までが参入障壁になり、消耗品の継続販売につながっていた。
これからは利益の伸び率だけでなく、その利益が次の医療分野へどう再投資されるかまで見ないといかんな。

そうなんだよ。カテーテルは細い器具に見えても、剛性、柔軟性、生体適合性を同時に成立させる技術の塊なんだ。
その再現しにくさが、医療現場での信頼と長期的な競争力につながっているんだよ。

あとは、既存事業で生まれた資本を、OrganOxなどの新領域で本当に回収できるかだね。
次は「構造成長への投資」と「高値づかみ」の境目を、株価と企業価値から見てみよっか。
テルモ(4543)企業分析レポート|作成日:2026年08月10日
【直近5年の業績推移】
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業益(百万円) | 経常益(百万円) | EPS(円) | 配当金(円) | 寸評 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.03 | 820,209.0 | 117,332.0 | 116,137.0 | 59.5 | 20.0 | 増収増益を維持 |
| 2024.03 | 921,863.0 | 140,096.0 | 140,829.0 | 71.5 | 22.0 | 利益成長が加速 |
| 2025.03 | 1,036,171.0 | 157,668.0 | 154,574.0 | 79.0 | 26.0 | 売上高1兆円突破 |
| 2026.03 | 1,131,877.0 | 176,320.0 | 178,252.0 | 92.1 | 30.0 | 最高業績を更新 |
| 2027.03予 | 1,239,000.0 | 257,500.0 | ― | 130.9 | 36.0 | 大幅増益を計画 |
【財務・キャッシュフロー概要】
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) | 現金残高(百万円) | 自己資本比率(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024.03 | 146,330.0 | -81,472.0 | -62,079.0 | 204,883.0 | 72.5 |
| 2025.03 | 210,802.0 | -82,481.0 | -108,766.0 | 221,872.0 | 74.8 |
| 2026.03 | 230,852.0 | -344,102.0 | 155,503.0 | 280,494.0 | 68.5 |
【財務コメント】
営業CFは3期連続で増加し、本業の現金創出力は強い。2026年3月期は大型投資により投資CFが大幅な赤字となり、資金調達で補った。自己資本比率は低下したものの68.5%を維持し、財務基盤にはなお厚みがある。
【会社概要】
テルモは、心臓血管、メディカルケアソリューションズ、血液・細胞テクノロジーを主要領域とする総合医療機器メーカーである。カテーテル、ガイドワイヤー、人工心肺装置、輸液・注射関連製品、血液成分分離装置などを展開。治療技術から院内業務、ライフサイエンスまで幅広く支え、160以上の国と地域へ製品・サービスを提供している。テルモ公式・創立100周年
【歴史】
1921年、北里柴三郎博士らの発起により、良質な体温計の国産化を目的とする赤線検温器株式会社として設立された。1963年に国産初の使い切り注射筒、1969年に日本初の血液バッグを発売。1974年に現社名へ変更し、1985年には血管内カテーテル分野へ進出した。その後、人工心肺、再生医療、血液・細胞治療などへ事業領域を広げ、世界的な医療機器企業へ成長した。テルモ公式・沿革
【立ち位置】
テルモは、医療用消耗品の安定需要と、高付加価値な心臓・血管治療機器の成長性を併せ持つ。精密加工、材料、生体適合性、表面処理に加え、各国の承認取得や医師の習熟が参入障壁となる。低侵襲治療の普及を収益基盤としながら、血液・細胞治療や臓器保存・移植支援へ領域を拭大しており、技術と継続消費を結び付ける位置にある。
【見解】
テルモは、医療需要の拡大、低侵襲治療の普及、海外市場の成長を背景に、売上高と利益を安定して伸ばしている。2027年3月期は営業利益46.0%増を計画し、第1四半期も売上高19.9%増、営業利益60.1%増と好調な滑り出しとなった。中長期的には、心臓・血管領域の高い競争力と、血液・細胞関連を含む事業領域の拡大により、持続的な成長が期待できる。一方で、株価は好決算を受けて急上昇しており、成長期待の織り込みが進んでいる。大型投資による投資CFの悪化、海外事業の為替変動、医療制度や規制変更にも注意が必要である。
【株価・市場情報】(2026年8月10日時点)
| 株価(終値・円) | PER(倍) | PBR(倍) | 配当利回り(%) | 信用倍率(倍) | 時価総額(億円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2,575.5 | 19.6 | 2.29 | 1.40 | 2.24 | 38,131.0 |
【同業他社比較】
| 銘柄名 | 株価(円) | PER(倍) | PBR(倍) | 時価総額(億円) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| テルモ | 2,575.5 | 19.60 | 2.29 | 38,131.0 | カテーテルなど心臓・血管分野に強く、血液・細胞関連も展開 |
| オリンパス | 2,098.5 | 21.81 | 2.98 | 23,400.0 | 内視鏡で世界首位、消化器向けを中心に治療機器へ注力 |
| 朝日インテック | 3,897.0 | 33.84 | 6.22 | 10,300.0 | カテーテル治療用ガイドワイヤーに強く、海外生産を展開 |
| 日本光電工業 | 1,515.0 | 16.16 | 1.37 | 2,544.0 | 脳波計やAEDで国内首位、生体情報モニターの海外展開を強化 |
| ニプロ | 1,671.0 | 18.52 | 0.98 | 2,865.0 | 使い捨て医療器具と人工腎臓に強く、医薬品受託も展開 |
【投資成功シナリオ】
低侵襲治療の世界的な普及により、カテーテルやガイドワイヤーなど心臓・血管分野が安定成長を続ける。血液・細胞テクノロジーや臓器移植支援など新たな事業領域も収益に貢献し、製品構成の高付加価値化が進む。2027年3月期計画どおり営業利益が大幅に拡大し、その後も増収増益を維持できれば、現在のPER19.6倍には割高感が薄れる。営業CFの増加によって大型投資を自己資金で回収できる体制が整い、増配も継続すれば、医療機器の世界的な成長企業として評価が一段と高まる可能性がある。
【投資失敗シナリオ】
好調な第1四半期と大幅な通期増益計画を受け、株価には業績成長への期待が急速に織り込まれている。新製品の普及遅延、医療機関の設備投資抑制、各国の保険償還価格引き下げなどにより成長率が鈍化すれば、PERの切り下がりと業績未達が重なる恐れがある。大型買収や設備投資から十分な収益を得られず、投資CFの大幅赤字と有利子負債の増加が続く場合、財務面への評価も悪化する。為替の円高転換、製品回収、承認遅延などが重なれば、利益成長を前提とした現在の株価水準を維持できない可能性がある。
【メモ】
2026年8月7日発表の第1四半期は、売上高19.9%増、営業利益60.1%増と過去最高を更新した。今後は大幅増益計画の進捗、新製品の成長、大型投資後の投資回収、営業CFと有利子負債の推移を確認したい。





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